初年度(平成7年度)においては、平面導体板上のモノポールアンテナおよびループアンテナついて、それぞれ電界波形、磁界波形のパラメータを測定するセンサとしての適用範囲および精度を明らかにするための研究を行うと共に、静電気放電を模擬する微小ギャップ電極間からの放電による電磁界波形のパラメータを測定した。具体的には、(1)近傍界補正を導入した透過係数法によって、測定したモノポールおよびループの複素アンテナ係数を用いて、各周波数ごとの電磁界の振幅と位相を求めた。また、これと理論計算との比較により、近傍界において複素アンテナ係数がどの程度適用できるのかを調べた。(2)微小ギャップ電極間放電装置および放電電流測定装置を設計・試作した。この放電電極から放射される電磁波が平面導体板上のモノポールおよびループに誘起する電圧を測定し、それぞれの電圧波形からモノポールおよびループの複素アンテナ係数を用いたデコンボリューションにより、電界波形および磁界波形を再生を試み、それが可能であることを確認した。 この結果、以下のように、ほぼ当初の計画を達成することができた。(a)測定したモノポールおよびループの遠方界複素アンテナ係数は、静電気放電を模擬する放射源の近傍の電磁界を測定する場合においても、2dB程度の精度で適用可能であることが分かった。近傍電磁界分布が分かっている場合には、誤差をさらに低減できる可能性がある。(b)複素アンテナ係数を用いたデコンボリューションにより、電界波形および磁界波形を再生が可能であることを確認できたことは大きな成果といえる。
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