3年間の研究において、静電気放電が発生する電界波形および磁界波形を正確に測定するため、電磁界センサの特性として新しいパラメータ“複素アンテナ係数"定義し、このパラメータを用いたデコンボリューション(逆畳み込み)により、正確な波形再生が可能であることを確認した。この技術を用いて静電気放電が発生する電磁界波形を測定した結果、静電気放電によるパルス性電磁波発生の新たなモデルとして、放電初期に電極間に流れる電流(初期放電電流)が形成する微小ダイポールと、放電路が形成された後に流れる電流(短絡経路電流)からなる“2放射源モデル"を提案した。このモデルを用い、発生する電磁界から初期放電電流、短絡経路電流を推定した。また、短絡経路電流と、実際に測定された電流を比較検討することにより、このモデルの妥当性を検証した。 上記のモデルを用い、電子回路の最小構成要素である両端に負荷が接続された伝送線路について、静電気放電によって発生する出力電圧を推定し、測定結果と比較することにより、モデルの有効性を確認した。さらに、電磁界センサの特性である複素アンテナ係数を測定するための手法を電磁妨害波計測用アンテナの特性測定に応用し、新しい測定手法を開発した。 なお、この研究過程で、金属電極を接近させ衝突させる実験を行なったが、固定された物体間のESD電磁界が電子回路に与える影響よりも、衝突によって起こるESDによる影響の方が大きくなる場合があることを確認した。この問題を電磁界計測によって解明した例はなく、平成9年度までの科学研究費による研究の成果を有効に活用し、系統的な研究を行なう必要がある。
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