研究概要 |
JISで規定されている、機械構造用鋼SNCM, SC, SCMの各材で25mm直径の軸を作成し、浸炭、誘導加熱等の方法で熱処理を行い、トルクセンサの入出力におけるヒステリシスを調べた。励磁電流の大きさによって、ヒステリシスループの回転方向が変化するものは、現在のところSNCM420浸炭材でのみ見いだされている。このサンプルに対しては、感度最大となる同期整流器の同期位相は、20-100kHzの広い励磁周波数帯で60-80度の狭い領域に存在する。最大感度の条件で、ヒステリシスゼロを満たす励磁電流は、20kHzで、0.5A、100kHzで0.25Aと励磁周波数の増大と共に小さくなる。ちなみに、検出ヘッド2個を用いた、フルブリッジ構成で、100kHzでの消費電力は250mWであった。浸炭材では、残留応力が表面に圧縮、内部に引っ張りとなるプロファイルがあり、現在は、この影響を2つの方法(表層をエッチングして特性変化の観察、切断面の保磁力分布測定)で分析を進めているところである。 一方、トルクセンサの検出ヘッドが磁気異方性を検出するものであることを利用して、スキャンニング機構と検出ヘッドを一体化し、磁気異方性イメージング装置を開発した。これは、非破壊検査、材料評価一般に応用が考えられるが、本研究では、トルクセンサ軸材の評価法として開発利用した。これによると、軸材には製造過程で特有の構造があることが判明した。例えば、30mm径のSNCM材には螺旋の組織パターンがあり、磁気異方性の分布として明瞭に見ることができた。また、他の、例えば、SC材では、軸に平行方向に同種のパターンが見られた。本来、軸周の不均一な構造は、トルクセンサの回転に伴うゼロ点変動の点で好ましくないが、これらのパターンは変態点以上の熱処理で消すことが可能であることを明らかにした。
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