鋼軸に内在する磁気ひずみ効果を用いた非接触検出形トルクセンサを、直交8の字コイル対からなる薄形磁気ヘッドと、最終段を同期整流回路とするブリッジ形検出回路とによって構成し、感度特性の評価、人出力間ヒステリシスのメカニズムの解明、軸回転に伴うゼロ点変動の評価、およびセンサに用いられる鋼軸材の評価を行った。これらの結果、ヒステリシスがゼロとなる条件の存在を調べる方法を確立し、トルクセンサの最適設計のための指針を得た。また、本研究の副産物として磁気異方性をイメージングする方法を開発した。 感度特性については、浸炭による表面硬化処理を施した鋼軸からでも十分トルク検出が可能なことがわかった。測定を行った4種の鋼軸、SNCM420浸炭処理軸、SNCM616浸炭処理軸、SNCM447焼入れ軸、SCM420浸炭処理軸の比較では、Niを多く含有するSNCM616が最も高い感度を示し、SNCM420、SNCM447が両者同程度でこれに続き、最も低いのがSCM420であった。 入出力間のヒステリシス特性に関しては、トルク無印加の初期状態を基準とした検出コイルのインピーダンスの変化分をニZとすると、ヒステリシスがゼロとなるような条件下では、印加トルク解放後のニZの位相が、同期整流器の同期位相に対して直交しており、そのため同期整流して得られるセンサ出力がゼロとなっていることがわかった。したがって、試験対象とする軸に対し、上記2つの量の直交化が可能かどうか調べることによって、入出力間ヒステリシスがゼロとなる動作条件(励磁電流、周波数、および、同期整流器の同期位相)が存在するかどうか判別可能である。 軸回転に伴うゼロ点変動は、ヒステリシスがゼロとなる条件が存在したSNCM420浸炭軸に絞った。磁気ヘッドを2個用いるフルブリッジ構成のトルクセンサにおいて、励磁周波数60kHz、励磁電流0.3Aで、ゼロ点変動が±1.3%/FS(FS=1000Nm、軸径25mm)程度となることを示した。
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