研究概要 |
精度の良い繰り返し塑性履歴を受ける鋼材の構成式(BMCモデル)を開発しそれを有限要素法に導入することによって,巨大地震時の鋼構造物の変形能および鋼管を使用した吸振装置の提案を行った。以下にそれぞれの研究内容を示す。 <軸圧縮力と繰り返し曲げを受ける無補剛鋼管の強度および変形能の解析> 鋼管橋脚などが局部座屈を起こさない限界径厚比を定めるため,解析モデルに軸圧縮力と繰り返し曲げを与え強度と変形能について調べた。解析より,降伏曲げモーメント以上の強度を確保する径厚比パラメータは0.0620,塑性率を6.0以上保証できる径厚比パラメータは0.0566となった。 <兵庫県南部地震で被災した鋼管橋脚の数値シミュレーション> エレファント-フット座屈などの被害を生じた鋼管橋脚は地震時の繰り返し水平力により生じたと推定される。これを解析的に明らかにするため,鋼管橋脚モデルに死荷重分の軸圧縮力と繰り返し水平荷重を与えたところ被害と同様なエレファント-フット座屈が生じた。また,この座屈は板厚変化部で起きることも解析的に明らかにした。 <極低降伏点鋼を主体とした桁に取り付ける制振装置の開発> 地震時の桁の変位を鋼管のねじりで抵抗することによって小さくし,落橋防止に有効かどうかの検討を解析的に行った。鋼管には高いエネルギー吸収能が期待できる極低降伏点鋼を用いて,地震時の桁変位を約半分に減少させられることが分かった。また,皿形の吸振装置と組み合わせて使用することにより,効率的に桁変位を減少させることが分かった。
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