本研究ではドラム型遠心装置内で波浪現象をモデルするシステムを構築することが主題である。それを用いて地盤と水系、さらに構造物系の連成挙動の物理モデルを可能にすることである。既設のドラム型遠心装置は直径800mmであり、その中にコンパクトに造波システムを設計した。実現象との相似側によりストロークが15mm、周期が5.75Hzの性能をもつ造波システムを設計し、可変直流モータで作動するタイプとした。また波浪現象を可視化するために回転ドラムには基準線を付しCCDビデオカメラも搭載される構造とした。総重量は25kgで、実験から100Gの遠心加速度でも造波装置は十分作動することが確認された。造波構造は、ドラム回転中心に置かれた造波システムにより半径方向の往復運動を与え、水中のパドルを上下させ、これにより両サイドに波浪を作り出す方式で、パドルの構造によって波浪の形態が異なることがわかり、4種類のパドルおよびパドル深度について比較実験を行い最適なパドルを選択した。このシステムを用いて、パドル水中の間隙水圧変動および砂層内の応答間隙水圧計測を試みた結果、0.5から1.2kPaの変動間隙水圧が発生することが判明した。これにより波浪による海底砂地盤の液状化現象、および砂層を支持層をする構造物の安定問題を物理モデルで解明できるシステムが構築された。この成果は、研究代表者がこれまで進めてきたドラム型遠心装置の地盤工学境界値問題への適用として「Development of Mini-Drum Centrifuges and a Few Initial Tests」としてとりまとめ、さらに波浪現象に着目した成果を「海底地盤の波による間隙水圧変化に関する遠心模型実験」として公開した。
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