研究概要 |
1.個人の時間利用データの収集 平成6年度において行った基礎的な調査を踏襲し,研究の遂行のために必要とされる,十分なサンプル数を確保するために,個人の時間利用データ収集のための新たなアンケート調査を行った。調査対象地域である阪神地区都市圏では,平成7年1月に阪神・淡路大震災が発生しており,平成7年6月に行った本調査結果を分析することで,個人の時間利用に対する震災の影響を把握することが可能になると考えられる。本アンケート調査で得られた有効サンプル数は,約1000人であり,以降の研究を進めるための十分なサンプルが確保できた。また,本アンケート調査によって得られたデータは,平成6年度に行ったアンケート調査によるデータ,及び平成8年度に行うアンケート調査によるデータと統合することによって,時間利用に関する非常に有用なパネルデータとして分析することが可能となる。 2.データの基礎集計 アンケート調査で得られた時間利用データに対し,基礎的な集計,及び分析を行った。1日における活動時間,活動実行といった側面から個人の生活行動を概観し,さらに,実行された活動の拘束性という個人の主観的評価に着目して定性的な分析を行った結果,個人が時間,場所に関する強い制約の下に行動していること,及び,そうした拘束性が性別,曜日によって異なることを確認した。また,実際の生活における生活効用を把握することを目的とした分析の結果,仕事や移動が満足度に対しての負の影響を与えること,自由活動の実行により満足度が高まることなど,実際の行動結果から生活効用の規定要因に関するいくつかの知見を得た。一方,選好データを用いた分析では,実験計画により配置された生活パターンの代替案の要因と代替案の選好順位との関係に着目し,制約のない条件下における個人の生活のパターンに対する選好の傾向から,生活効用の規定要因を把握できた。
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