研究概要 |
1.水道水中有機塩素化合物のヒト細胞に対するDNA損傷性の評価 水道法第4条件に基づく水道水質基準が、平成4年12月21日公布、平成5年12月1日施行の省令により改正され、新たに13種類の有機塩素化合物が健康に関連する項目として追加された。これらの物質は原核生物や実験動物などでは変異原性が確認されているが、ヒトに対する影響はよくわかっていない。そこで、これらの物質のヒト繊維芽細胞に対するDNA損傷性を、アルカリ巻き戻し法の1つであるFADU法を用いてDNA鎖切断を検出することによって評価した。調べた物質は、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、クロロジブロモメタン、ブロモジクロロメタン、ブロモホルム、1,3-ジクロロプロペンの計11種類である。その結果、1,2-ジクロロエタン及び1,3-ジクロロプロペンが濃度依存的なDNA鎖切断を誘起した。しかし、その他の化合物はDNA鎖切断を誘起しなかった。 2.水道水のヒト細胞に対するDNA損傷性の評価 今回我々は、京都市と大阪市の水道水のヒト細胞に対するDNA損傷性を評価することを試みた。水道水をSep-pak C18カートリッジを用いて濃縮し、FADU法を用いてヒト細胞に対するDNA鎖切断誘発を調べた。その結果、大阪市の水道水は、京都市の水道水や京都市の地下水に比べて、高いDNA鎖切断能を示した。さらに、このDNA鎖切断能がS9mixの添加、グルタチオンの添加、あるいは煮沸によって不活化されることを確認した。
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