本年度における第一の作業は、実験研究において提示する窓外景観の動画像を準備することであった。そのため先ずはじめに、都心の超高層建築の最上階においてスラストモーターの利用により超低速の等速直線運動の条件の下に、テレビカメラを動かし窓外景観の動画像を得た。その画像を用い、本年度購入設備備品であるビデオビジョンシステム(ラディウズ社製)により、任意周期で正弦波の往復運動をする振動画像の編集に労力を費やした。それらの動画像を用いて視覚のみによる振動の知覚開始閾を求める予備実験と、その結果と比較すべき体感のみによる知覚開始閾に関する実験とを行った。従来体感による振動の知覚は周期依存の下に加速度との対応が通説となっている。しかし、予備実験の結果視覚による振動の知覚においては、加速度よりもむしろ速度対応の方が優位である傾向をとらえるに至っている。 高層建築物の上層階から眺めるられる窓外の景観を動画像化し、それをビデオプロジェクターによって透過スクリーン上に映し出すというこれまでに全く試みられていない手法を採用する事で、事に当たるまでは画像の質上の懸念が無かった訳ではない。しかし、画像編集には相当の労力は要するものの、画像の継ぎ目等に関する不自然さなどは全く見られず、期待通り編集が可能なことを裏付けた。
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