本年度は実験精度の向上を目指し、実験条件における振動数成分を変化させ昨年度と同様に振動知覚に関する被験者実験を行い、さらに並進振動とねじれ振動の合成振動に関しての実験も同時に行った。それらの実験により得られたデータをもとに既往の研究、ISO6897、日本建築学会指針、カナダ・アメリカ指針ならびに実在の建築物の振動実測値との比較検討を行った。検討の結果以下のような結果が得られた。 (1)ねじれ振動においては、体感知覚の影響は視覚知覚に比べ非常に少ない。 (2)平成8年度の報告書の並進振動に関する考察と同様に、ねじれ振動視覚知覚の場合も知覚閾は振動数成分に依存しない。 (3)体感とし視覚の合成条件においても、知覚閾への相乗効果は見られない。 (4)ねじれ振動カナダ、アメリカ指針における再現期間1年の値である1.5mrad/sは50%知覚閾の約2倍の値もしくは90%知覚閾の値に相当する。 (5)わが国の実在の建築物においても、並進振動における各国指針の許容値を超える振動の発生実績が見られる。 (6)かつて実測を行った超高層建築物2棟について並進振動、ねじれ振動の相互の応答対比を行った結果、並進振動加速度(α)と、ねじれ振動角速度(v)との間に10v≒αの関係が成り立っていることをとらえた。 (7)観測を行った2棟の建築物の振動持性から推測すると、カナダ・アメリカ指針のねじれ振動に関する許容値は非常に大きな値となっている。 (8)日本においても実在建築物に関わるねじれ振動持性を詳細に把握し、それをベースに将来の建築物の更なる高層化に向けての評価指針の検討が必要であろう。
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