1)旧法期における福岡県の土地区画整理事業のうち、換地確定図及び組合資料が得られた23組合を対象として区画形質及び街区・住区の形態的特性を分析した。これにより当時の土地区画整理事業は地形や都市計画道路等の与条件に対応した柔軟な計画となっていることが明らかとなった。さらにまた、各組合の標準画地・街区は計画区域ごとに共通した値を設定しているが、これは全国的標準と大きく異なっていることが明らかになった。 2)先進的な事業展開を可能とした背景について委員会技師へのヒアリング調査及び研究雑誌等の歴史的資料により考察した。この結果、事業推進の要因として、(1)県土地区画整理奨励規定及び駐在制度等の制度的、且つ、組織的な整備、(2)地方委員会職員による換地処分等の実務的研究とその成果の実現を可能にする熟達した駐在員の存在等を明らかにした。 3)23組合のうち典型的計画事例である福岡市西部土地区画整理事業を対象として組合設立、設計変更、換地確定時の各計画図及び組合資料より、計画変更過程の実態を分析し、次の2点を明らかにした。(1)組合設立時の計画において画地・街区及びその配置は標準化を強く意識したものとなっている。(2)事業が遂行するに従って画地レベルの計画変更に加えて区画道路、街区レベルの変更が行われている。 4)従前・後の画地面積、地目及び所有状況により換地計画段階の計画変更要因を分析した。これによって西部の計画変更における計画的理念(規格統一)に対する事業実務の優位性を明らかし、これが「計画技術体系」の未成熟に依拠していることを指摘した。また、具体的検討として区画整理後も田・畑の地目が残されており、地目によって画地面積に差異が生じているを示した。加えて、住宅地計画の考慮の反映の結果、計画の自由度が高い街区において画地面積は標準画地120坪の整数倍に収束し、標準画地の最小単位化による計画が行われている等を明らかにした。
|