1.本研究は我が国の住宅地計画の歴史的展開を明らかにする上で、旧法期土地区画整理事業における標準設定型計画理論の成立過程及び具体的な先進的事業事例との関係について知見を得るため、街区、画地の規格統一の視点から、(1)内務省及び土地区画整理研究者によって提案された街区標準と画地標準の特徴とその根拠、(2)地方先進地域であった福岡県の事業事例における街区、画地の計画実態を計画史的に考察することを目的としている。 2.我が国の街区、画地に関する計画論は一部の内務官僚や技術者によってのみ行われていたが、その内容は街区や画地の辺長の標準を設定する点に止まっており、こうした計画理論水準で我が国の土地区画整理の計画理論である標準設定型計画理論が確立したと考えられる。 3.全国有数の事業実績を残す福岡県は、土地区画整理の地方化において先導的な位置にあり、事業推進の要因として(1)「福岡県土地区画整理奨励規定」や駐在制度による福岡県の積極的な推進力、(2)本来は土地区画整理事業を業務としない都市計画福岡地方委員会職員による換地設計等の事業研究の成果、(3)長期にわたって駐在した熟達した実務技術者の存在、以上の3点を明らかにした。 福岡県の具体的な計画は、1つの街区、画地の辺長の標準を基本的単位としている点で標準設定計画理論と同様であり、特に街区短辺の標準化が重視されていた。一方、画地の計画では現実的な換地設計がの関係で標準化の意図は相対的に低い位置を占めていた。このため、事業実施過程に伴い画地レベルの大きな計画変更が行われ、街区と画地の計画的乖離が生じていることが明らかとなった。 1つの街区、画地の形状が重視される標準設定型計画理論が、現在の画一的な住宅地設計の基本的理論となっていると考えられ、本研究の成果は新たな計画理論(ポストスタンデ-ディゼイション)への転換を図る上で、基礎的な知見として重要である。
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