本研究は、1960年後半から30有余年にわたって粘り強い町づくり活動を続けてきた神戸市長田区真野地区において、その事業主体としての「町づくり会社・NPO」の成立可能性を検討しようとするものである。 真野地区は高度成長期には激烈な公害問題に直面し、低成長期になると一転して深刻なインナーシティ問題に悩まされている大都市の「最低辺地域」である。しかし、優れたリーダーやブレインの存在によって、公害問題の解決と生活環境整備を核とする持続的な町づくり運動を展開し、地区のインフラ整備と街区の居住環境改善を公共事業を通して着実に実現してきた。また、多様な高齢者福祉事業にも取り組むなどコミュニティ活動も積極的に展開している。 阪神・淡路大震災は地区の住宅に多大な被害を与えたが、住民は一致して防災活動と復興活動に取り組み、神戸市の援助施策ともあいまって住宅復興は着実に進んでいる。そして全国からの義捐金を基金として、真野まちづくりを推進するための「まちづくり会社」も設立された。 しかし、NPO法は成立したとはいえ、NPOに対する公共セクターからの組織的・財政的援助は皆無であり、真野地区においても現段階では「まちづくり会社・NPO」が活動できる余地はほとんどなく、従来からのまちづくり事業は全て公共事業に頼る他はないのが現状である。行政主導の公共事業システムの抜本的転換が求められる。
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