研究目的:加齢につれて人間の眼球水晶体は50歳台から、長年にわたる紫外線の影響を受け構成タンパク質が黄変化し、視界が黄ばむ。この知覚の変化が歩行時の行く先の見通しや足元の判断に誤認を起こさせ、高齢者の日常災害多発の原因のひとつともなっている。 研究実績:建築空間を構成するコンポーネントの内、高齢者の生活の安全上で重要な役割を果たす床・壁の仕上げ材料の実物見本を対象に色事典の作成を目的とした。まず、現在普及しているこれらの多種の実物色見本の屋内仕上げ材色329色の収集を行った。収集に際しては、床材に埋め込む視覚障害者用ブロックや階段や段差の段鼻に使う框材・幅木など、今後日常生活安全上から注目され開発の途上にある実物色見本をも対象とした。 次に、平成4年度の科研で購入したハンディ色差計を用いて、各種実物色見本を計測し、さらに、これら実物色見本に、平成5年度に科研の成果として得た加齢黄変化レベル別黄色薄膜をそれぞれにかけ、その黄変色度と視認性に深く関わる輝度率をそれぞれ計測した。 こうして得た色度座標・輝度率をコンピュータ内に、原色と黄変化レベル別変色の色のそれぞれの見本を対応セットとして記憶させ、これらの出力はコンピュータに連結した平成7年度科研購入のカラープリンターを通して出し、色辞書を作成した。さらに、加齢黄変化後も見分けやすい空間認知の基礎となる床・幅木・壁の仕上げ材色や視覚障害者用床材色の選定法にも輝度率比からふれた。また、標識色としては、色名事典220種色の加齢黄変前後の対比色の辞書を作成し、多彩な標識色の黄変化色を見知った上での設計者の選定可能にした。今後は検索法やカラーコーディネート示唆への展開が必要である。
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