平成7年度はTi-(7〜13)mol%Al合金において、1100Kで系統的な引張試験を行い、高温強度が固溶強化理論から予想される値より大きくなることを示した。また、この異常強化は短範囲規則構造に起因することが、室温におけるTEMおよびX線構造解析によって示唆された。 本年度は分子動力学計算を用いて短範囲規則構造の存在を確認し、その特質を調べ、高温強度に及ぼす影響を考察した。原子ポテンシャルはTi-Alの金属間化合物の場合に用いられている文献値を用いた。ポテンシャルの妥当性を独自に調べた結果、実験温度近傍では(α+α_2)二層領域の境界を良く再現することが判明した。計算の結果、高いAl濃度の合金においてTi_3Alと同様の最近接原子配列を持つ短範囲規則構造の存在が確認された。また、Al濃度が増加するに従って短範囲規則構造はクラスターを形成するようになり、そのサイズと数が増加することが明らかになった。増加の度合いは5mol%Al以上の高濃度で顕著になり、高温異常強化が観察される濃度範囲と良い一致を示した。 来年度(最終年度)は、高温X線回折による詳細な構造解析を行うとともに、ポテンシャルを精密化して、広範な温度範囲における短範囲規則構造の特徴を研究する。
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