研究概要 |
本年度は、Al-Pd-Re準結晶の電気物性の組成依存性をくわしく調べるとともに、Al-Cu-Ru準結晶およびその近似結晶について光電子分光を中心として電気物性の研究を行った。 Al-Pd-Re合金は準結晶中最も高い電気抵抗率を示すことで注目されているが、われわれはさまざまな試行を繰り返してその組成制御に成功し、抵抗率の組成依存性を明らかにした。その結果によれば、e/aが1.75より高いところに準結晶単層領域が存在するが,1.75の線に沿って特にPdの多い組成で電気抵抗率の高い領域が存在することがわかった。 Al-Cu-Ru合金に関しては、電気抵抗率の温度依存性が準結晶では半導体的であり、2つのタイプの近似結晶(1/0および1/1)で金属的であることを明らかにした。そこで準結晶および近似結晶の光電子分光測定を行った。その結果は、フェルミエネルギー近傍での擬ギャップの存在、すなわち電子状態密度の低下が観測されたが、理論計算から予想された巾のせまいスパイク状の状態密度変化は準結晶・近似結晶ともに観測できなかった。その理由は、光電子分光の分解能(25meV)がスパイクの巾より広く観測できなかったためか、試料中に原子配置の化学的な乱れが存在する結果であろうと考えられる
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