本研究室において世界で初めて開発された「質量分析計付帯の超高真空材料試験装置」を使用することにより、大気溶解したAl-Mg合金において水素が破壊と同時に試料から放出されることを明らかとした。一方アルゴン雰囲気中で溶解した合金では、大気溶解合金に比べ含有水素量は1/7と減少し、破断時に放出される水素料は低減した。そしてアルゴン溶解材は、大気溶解材と比較して局部変形能が大幅に向上した。したがって、溶解雰囲気中から混入する水素によりAl-Mg合金の室温延性が低下すると結論された。 このように破断時の水素放出挙動が明らかになったことから、変形時に水素が転位によって運ばれることが予想されるが、これを示した研究はこれまでみられなかった。本系合金にみられるセレーションを利用することにより、そのような検討が可能と考えられる。しかし上記試験機は油圧式であるため剛性が低く、例えば本合金の室温均一変形時に観察されるセレーションと放出水素との関係が明瞭ではなかった。そこで新たに歯車式の材料試験機を使用し、真空度は上記装置と同程度(10^<-8>Pa)の装置の製作も行った。その結果、セレーション発生時に荷重の落ち込みに対応して水素が放出されるのが今回初めて確認された。また試料表面を電解研磨して酸化皮膜をて除去した試料についても超高真空中で引張試験を行った結果、やはりセレーションと同時に水素放出が観察された。それ故、水素は試料内部から転位によって試料表面に輸送されてきたものであると総括された。
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