研究概要 |
拡散を伴う相変態、すなわち相分離現象は材料科学の基礎として多くの未解明な問題を残した重要な現象である。すなわちゆらぎ(核)の形成と成長さらに粗大化へと相分離が進行する段階で、初期過程では組成ゆらぎの振幅が小さく線形的な振舞いをするが、ゆらぎの振幅が大きくなるに従い非線形な要素が主要になる。全体のパターン形成を決定づけるのは、この非線形な相分離中期過程である。すなわち本研究の目的は非線形な相分離が進行する中期過程でのメゾスコピックなパターン形成機構の定量的な解明と相分離構造のスケーリング方法を確立することにより、メゾスケールの相分離構造を予測・制御する方法を明らかにすることである。平成7年度の主な成果は(a)Al合金及びFe合金を用いた小角散乱その場測定:SANSを高エネルギー物理学研究所ブ-スター利用施設において、またSAXSをホトンファクトリー実験施設で行い、これにより実験的に構造因子S_<exp>(k,t)を得た。(b)相分離理論の検討:Langerによる非線形拡散方程式について自由エネルギー関数の導入とその展開について数値計算可能な形式を検討した。 (c)数値解析:上述のLangerおよびBinderの理論の数値解はいずれも差分法によって解析できるのでワークステーションを導入して計算を行った。同時にイジング系のモンテカルロ法による相分離のシミュレーションも実施し、理論的な構造因子S_<cal>(k,t)を得ることが可能となった。
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