研究概要 |
γアルミナ多孔体を従来にない新しい合成法である選択溶解法により作製し,その多孔体特性について調べた. 出発試料として天然に多産するカオリン鉱物の内,六角板状のカオリナイトと中空管状のハロイサイトを用いた.これを900〜1200℃で熱処理した.この処理により試料中には結晶子の非常に微細なγアルミナと非晶質シリカが生成していることがX線回折法により確認された.この熱処理試料を水酸化カリウム溶液により処理して非晶質シリカを選択溶解した.その処理条件は;処理温度:室温〜95℃,処理時間:5分〜3日,KOH濃度:0.5〜4.0mo1/1とした.その結果,ハロイサイトでは75℃で1時間処理することにより比表面積(BET)が320m^2/gの最高値となった.一方,カオリナイトではシリカの溶出速度はハロイサイトより遅く,90℃2時間の処理で最高比表面積270m^2/gが得られた.得られた多孔体の細孔径分布は,ハロイサイトでは5〜6nmと20〜40nmの細孔径をもつバイモーダルな分布を示した.一方,カオリナイトでは5〜6nmに非常に均一な大きさの細孔をもつことが分かった.細孔の大きさは熱処理温度により5〜8nm程度の範囲で制御でき,熱処理温度が高くなるほど細孔は小さく均一になった.ただし,1100℃以上の温度では主結晶相がムライトに変化するため細孔径が20〜50nmと大きくなり,分布も広がることが分かった.結局,カオリナイトを900〜1050℃で熱処理し,KOH溶液で非晶質シリカを選択溶解処理することにより均一な細孔を有する多孔体を作製できることが明らかとなった.
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