従来、炭素材料は主に電気炉等で熱処理を施すことによって調製され、その物性について広く研究が展開されてきた。レーザ照射による炭素体の調製は、急速炭化という点で従来の熱分解プロセスと大きく異なり、新物質探索の上で極めて興味深いものである。すなわち本研究ではレーザ加熱の方法で新炭素体の調製を目的とし、従来の方法である熱処理法と比較検討しながら、その基礎物性の評価とその応用の可能性を提案することである。前駆体として各種高分子フィルムを用い、それぞれに異なるパワーのレーザを照射し、また照射時間を変化することによって新規の炭素体を調製した。このプロセスによると大気中での炭化が可能である。照射部分の雰囲気を大気中のみならず不活性ガスについても同様な実験を行い、その炭素化における相違点を検討した。主にポリイミドを前駆体とした炭素体について、その物性を明らかにするべく研究を進めている。FE-SEMを用いレーザ照射面を観察すると、急速炭化のためと思われる特徴的な構造が確認され、またX線回折やXMA、ρ-T特性などを用いてその基礎物性を詳しく解析しているところである。来年度はレーザを照射したポリイミドの物性の解明を引き続き進めるとともに、これらによって調製した炭素体により、電気二重層キャパシタ用電極材料への応用を目指す方針である。
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