研究概要 |
セラミックスの高靱性化・高信頼性化を目的とし、反応溶浸法により炭化ケイ素ウイスカー及びアルミナ繊維/セラミックス/金属複合体の製造を検討し、次の知見を得た。1.アルミニウムの酸化助剤としてパイレックスガラスを添加し、1050℃で連続的に酸化することにより、アルミナ粉末と炭化ケイ素ウイスカーの混合成形体(厚さ5mm)に3時間で浸透できた。2.本溶浸に伴い炭化ケイ素ウイスカーが酸化されシリカとなり、さらにこれがアルミニウムと反応し、最終生成物は炭化ケイ素ウイスカー/アルミナ/アルミニウム/ケイ素複合体となった。3.本溶浸プロセスにより、気孔率50%の成形体を気孔率4〜10%にまで緻密化できた。4.複合体の曲げ強度は炭化ケイ素ウイスカーの仕込み量とともに500MPa(仕込量:0wt%)から300MPa(20wt%)及び309MPa(100wt%)に低下したが、破壊靱性値は3.8MPa・m^<1/2>(3wt%)から4.5mMpa.^<1/2>(20wt%)に増大した。5.試料へヴィッカース圧子を打ち込み、その圧痕からのクラック進展状況を調べた。ウイスカー無添加の試料及びアルミナ標準試料ではクラックは圧痕の角から直線状に伸びたが、炭化ケイ素ウイスカーを多く含む複合体では鱗片状に破壊が起こり、壊れにくい材料であることがわかった。6.炭化ケイ素繊維の複合化を試みたが、10wt%以上の繊維を混合すると成形体形状を保持できないことがわかった。5wt%の繊維を含む複合体では、曲げ強度:403MPa,破壊靱性値:3.1MPa・m^<1/2>となった。7.アルミナ繊維成形体を含む複合体では、曲げ強度:360MPaとなり、そのヴィッカース圧痕からのクラックも鱗片状を呈し、特異な破壊挙動を示すことがわかった。8.ウイスカーの酸化を防ぎ、繊維成形体への溶浸を容易にするため、今後カオリン鉱物との複合成形体への溶浸を検討する予定である。
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