研究概要 |
Al_2O_3粒子、ZrO_2繊維、SiCウイスカー、Si-Ti-C-O繊維を添加した天草陶土焼結体中に溶融Alを反応溶浸させる方法により、セラミックス繊維強化Al_2O_3/金属複合体の製造を試みた。(1)陶土/Al_2O_3粒子焼結体への溶浸は800℃から起こり、その溶浸深さは反応温度の上昇とともに0.5mm(800℃)から3.5mm(1000〜1100℃)へと増加したが、1200℃では2mmに低下した。得られたAl_2O_3/Al/Si複合体(気孔率;4%)の曲げ強度及び破壊靱性値は、それぞれ240MPa,4.3MPam^<1/2>となった。(2)ZrO_2繊維を添加した場合、Alの溶浸速度は繊維無添加のものに比べ2/3程度に低下した。この際、ZrO_2がAl及びSiO_2と反応Al_2O_3/Al/Si/ZrSi_2複合体が得られた。本複合体の曲げ強度はZrO_2繊維添加量とともに360MPaから110MPaへと低下したが、破壊靱性値は3.3〜4.2MPam^<1/2>とほぼ一定の値を示した。(3)SiCウイスカー添加の場合は、Alの溶浸速度は大きく低下し、さらに溶浸に限界が生じ深さ1mm程度までしか反応しなかった。これは炭化珪素が本溶浸反応に対し不活性で、微細であるためその分散阻害効果が大きくなったためと考えられる。(4)Si-Ti-C-O繊維添加の場合は、Alの溶浸速度は繊維無添加に比べ約1/2程度に低下した。反応による繊維の変化及び繊維とマトリックスとの反応はほとんど認められなかった。繊維添加量とともに曲げ強度は240MPaから70MPaまで低下したが、破壊靱性値は3.3MPam^<1/2>から6.6MPam^<1/2>まで増加した。 以上より、セラミックス繊維の種類及び形態により溶浸速度が大きく影響され、また機械的特性も変化することが分かった。一般に、繊維を添加することにより複合体の気孔率が増加し、曲げ強度は低下した。溶浸反応に不活性な繊維を用いることにより、破壊靱性値が向上できることが分かった。
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