本年度は、3カ年計画の2年目に当たる。 本年度は、これまでに開発してきたシミュレーションプログラムの中で、特に高弾性率強化材による応力遮蔽効果の影響を精度よく考慮できるように、き裂先端付近の要素分割方法などを検討した。この検討で、強化材の形状や主き裂先端に対する方位角等の影響を精度よく考慮できるようになった。また、複雑に偏向したき裂の先端の応力拡大係数を、精度よく計算する方法を検討した。この中で、体積力法によれば、比較的短い計算時間で精度よく計算できることが明らかとなった。この計算プログラムをFortranで記述し、従来の有限要素法解析によるものと比較した検討を行った。 さらに、前年明らかとなったMMCの局所的なミクロ組織の形態がその引っ張り強度に及ぼす影響を、非線形有限要素法解析で検討した。その結果、強化材周囲に形成される弾性限が低く溶質原子濃度が高い数十nmオーダーのPFZ層が優先的に変形し、MMCの強度を著しく低下させることがわかった。一方で、強化材表面に形成される比較的粗大な析出物は、PFZ内の塑性流動を有効に阻止して、PFZの形成によるMMCの強度低下を有効に防止する働きがあることが明らかとなった。この場合、析出物サイズが大きくなるほど、この効果は顕著になった。また、強化材表面の析出物が有効に働くための、界面強度や析出物の破断強度、サイズなどの力学的条件についても検討した。
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