析出硬化型アルミニウム合金基の複合材料では、界面近傍にPFZや粗大な析出物が形成され、非平衡偏析も観察される。本研究では、これらの影響を弾塑性有限要素法で解析した。PFZ層の形成によって、母相の広い領域にわたって塑性歪が増加し、MMCの強度が低下する事が予測された。また、同時に強化材端部でのボイドの発生も促進されることが明らかとなった。一方、界面析出物は、PFZの塑性流動を拘束して強度低下を抑制する方向に働くことがわかった。 さらに、これらのミクロ組織的特徴の影響を考慮し、金属基複合材料中に存在するき裂の進展開始および伝播特性を数値解析で評価した。上記の微視的なミクロ組織の特徴により、強化材内部、界面、強化材近傍の応力は大きく変化し、それらが剥離や破壊することで生成するマイクロクラックは大きく影響を受けた。数値解析では、発生したマイクロクラックや強化材自身による応力遮蔽効果、き裂偏向の効果、成長き裂先端の応力場特異性の変化なども考慮した。マイクロクラックが一度生成すれば、主き裂はマイクロクラックの方向に向かって伝播し、マイクロクラックの中心位置を通過する。この挙動は、主亀裂からどれだけ前方でマイクロクラックが発生し得るかや、強化材による応力遮蔽効果の大小(すなわち強化材/マトリックス間の弾性率差)によって大きく影響された。また、体積率、強化材の破断強度、界面剥離度、強化材の空間的分布状態など、様々なミクロ組織因子を変化させた場合の破壊特性を評価した。特に、強化材の分布形態に関して、適度な凝集があるときに破壊抵抗が極大となり、均一分散の場合と比較して20%以上の向上が予測された。このような組織形態の時の強度特性についても数値解析で評価した。
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