TiAlの疲労現象を交番応力下の転位の往復運動と、その際の転位間ならびに双晶、微細下部組織との反応として捉え、このような微視的立場からTiAlの疲労ならびに破壊機構の解明とその特性改善策を調べるのが本研究の目的である。 TiAl PST結晶の作成は光学式浮遊帯域溶融法により行なった。室温における全歪制御疲労試験を行ない、疲労硬化曲線、寿命ならびに塑性歪エネルギーの結晶方位依存性を調べた。層界面と平行に変形が起こる場合、いずれの歪振幅においても疲労硬化を示すことなく破壊した。一方層界面と交差するような変形が起る結晶方位では、繰り返し変形数の増加に伴なって著しく疲労硬化し破壊に至る。この際、歪振幅の増加に伴なって疲労硬化は激しくなり、疲労寿命は急速に低下した。変形微細組織はTiAl PST結晶のγ相中のドメイン方位に依存し、変形双晶が主に活動するドメインと転位が活動するドメインの2種類があった。転位は繰り返し応力負荷に伴なって往復運動し、高密度に堆積したベイン状の組織を形成した。このベイン状組織による大きい残留応力場が疲労硬化の原因となる。また、変形双晶ならびにその界面で活性化される転位運動の結果として試料表面に大きい突出しを生じ、この部分の応力集中が亀裂発生の起点として働く。従ってこの双晶発生を抑制する元素の添加が疲労寿命改善には効果がある。事実、積層欠陥エネルギーを上昇させるNbの添加は、双晶発生を抑制し、疲労寿命改善に効果的に作用した。
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