研究概要 |
固体粒子が金属表面に衝突して生ずる圧痕では色々な損傷機構(切削,塑性変形,押し込み)によって特徴的表面が生ずる.まず,これら損傷機構の違いによる腐食速度の変化を調べたところ,切削部表面の腐食速度は減少し,塑性変形によって生じる盛り上がり部分の腐食速度は加速されていた.押し込み部分の腐食速度は衝突前と変化がなかった.これらの結果より,腐食速度が金属表面の損傷機構により異なることが確認された. 次に,粒子の衝突角度を30°,50°,60°と変化させたときの腐食速度を調べたところ,30°,60°,50°の順に増加した.これは30°においては表面が切削損傷を多く受けているので腐食速度が減少し,50°,60°においては表面に盛り上がり部分が多く存在し腐食速度が増加するためである.しかし衝突速度を下げていくと腐食速度の差は減少し,ある衝突速度以下では粒子衝突角度に関係なく同一の腐食速度となった.この速度を,衝突角度によらず損傷機構が一定になる速度,すなわち臨界衝突速度とした. 今年度は,損傷表面の腐食速度を測定することによって臨界衝突速度を実験的に求め,臨界衝突速度に対する粒子径の影響を調べた.衝突粒子の粒径を大きくすると臨界衝突速度の値は減少するが,粒径40μm以上ではほとんど変化がなかった.来年度以降は,エキソ電子測定装置や当研究室で新しく開発した回転試片式摩擦係数測定装置を用いることによって臨界衝突速度を求め,それらを比較する.さらに,任意の粒子と試片の組み合わせについての臨界衝突速度を求める理論式を導出する.
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