研究概要 |
昨年度の実験により、反応層の形成過程を明らかにすることができたが、Crめっき層の厚さが薄い場合は、接合の主体をなすCr窒化物層が接合界面の全域に生成せず、その結果、接合加熱の際にすでにNiと窒化ケイ素の直接反応が起り、ぜい弱な反応層を形成してしまうことが明らかとなった。従って、本接合方法による耐熱性向上のためには、接合加熱時及び接合加熱後におけるNiの窒化ケイ素側への拡散の阻止が最も重要である。このNiと窒化ケイ素の直接反応を阻止するためには、徴密でかつNiの窒化ケイ素側への拡散を阻止できる厚さのCr窒化物層を形成させるとともに、接合加熱時においても生成するCr窒化物層中のNi量を極少とし、Cr窒化物層を徴密化する必要がある。そこで、今年度は、まずCrめっき層厚及び加熱温度を変化させ、各Crめっき層厚及び加熱温度条件で形成したCr窒化物層とNiの窒化ケイ素側への拡散挙動の関係を検討した。その結果、Crめっき層厚さ及び接合加熱温度を変化させることにより、ある程度まではNiの拡散を抑えることはできるが、十分にNiの拡散を阻止できないことが明らかとなった。そこで反応層の主体であるCr窒化物層の徴密化の方法として、昨年度の実験で得られた結果をもとに、CrめっきNi板をあらかじめ真空中で焼鈍し、合金化した後、1473Kでの接合を試みた。その結果、Ni濃度の極めて低い徴密なCr窒化物層の形成が可能であることを見い出した。この方法により接合した接合対について、真空中で1073K,200hの加熱により耐熱性を検討した結果、Niの拡散が抑制でき、良好な反応層の高温安定性が確認できた。さらに、Niの窒化ケイ素側への拡散阻止手段として、複合被覆層インサート材の試作による検討を行ったが、接合に必要な厚さの複合被覆層の作成が不可能であったため、複合被覆層によるNiのバリアー効果に関しては検討するに至らなかった。
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