自己フィードバック型素過程をもつBelousov-Zhabotinskii反応を化学反応の複雑系として用い、流通型反応装置で速度過程に対する濃度勾配拡散と局所ミクロ混合の影響を調べた。完全混合と仮定できるCSTRを上流側に、下流側に流れ方向に拡散抵抗のあるテイラー渦流反応器(TVFR)を連結して流通型反応装置とした。この場合、非線形性の強い反応の複雑系とTVFRの非線形性の強い流動の複雑系がカップリングするので、TVFR自身の流動の不安定性と流動遷移の分岐現象についても調べた。もう一つの複雑系化学反応としてスチレンの乳化重合もTVFRで試みた。 1.流動実験:TVFRの流動の不安定性については環状部流動域のアスペクト比と定常操作に至るスタートアップにおける履歴性と再現性が重要なポイントであり、低レイノルズ数領域では分岐現象に強い履歴性があること、流体カオスが発生する高レイノルズ数になると履歴性は弱くなること、 2.反応実験:CSTRでB-Z反応が動的平衡状態あるいは単一ピークの化学振動状態にある反応液をTVFRに供給した結果、動的平衡状態入力の場合、TVFRにおいて安定した単一ピーク振動が得られたが、単一ピーク振動入力(強制振動入力)の場合、 TVFR内での化学振動は単一ピーク振動に類似するが、流体の乱れ(軸方向拡散と局所ミクロ混合)が大きく影響して不安定になった。スチレンの乳化重合では、準周期性波動テイラー渦流以上のレイノルズ数で適切な反応条件が得られ、小さなラテックス粒子の状態で粒子径が揃うこと を見いだした。
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