本研究ではポリオレフィンをはじめとする種々の廃プラスチックスを水素並びに炭化水素ラジカル供与物質として利用する、新しい石炭の急速熱分解プロセスを開発する。すなわち、微粉炭と廃プラスチックスを緊密に接触させて急速熱分解し、石炭の熱分解ラジカルに対して、プラスチックスから生成する水素、炭化水素ラジカル等の活性種を高効率で供与し、当該プラスチックスのモノマなどの化学原料を得ると同時に、石炭液収率、とりわけBTXなどの軽質芳香族の収率を無理なく実現しようとするものである。 本年度は、ポリオレフィンを360℃〜420℃で1時間熱処理してTHFなどに溶解させ、その中に粉砕した石炭を混合して処理することによって、石炭を溶剤で膨潤させるとともにプラスチック低分子化物の複合化を行った。FTIR分析、DSC分析の結果、プラスチック由来の化合物が石炭の網目構造の内部に挿入されているととを確認した。複合化物はキュリーポイント熱分解装置を用いて工業装置に類似した速度で昇温し、2次熱分解が起こらない条件での熱分解挙動を測定した。石炭とプラスチック単独の熱分解挙動と、それらの複合化物の熱分解挙動を比較し、プラスチックから石炭に効果的にラジカルが移行していることを種々の反応条件下で確認し、本プロセスの有効性を明らかにした。この実験において、購入した質量分析計を用いて熱分解生成物の測定を行った。
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