研究概要 |
1.プラマスグラフト重合法を用いて,多孔質支持体にスルホン酸基を有するモノマーである2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸(AMPS)とアクリル酸メチルをグラフト共重合してイオン交換膜を作製した.この膜に,エチレンのキャリヤ-として硝酸銀水溶液を含浸させたキャリヤ-輸送膜は,高いエチレの透過性,エタンに対する選択性を示した.また,カルボキシル基を有するアクリル酸グラフト重合膜では,エチレンの透過速度は極めて小さかった.膜内のイン基の種類により膜透過性が著しく変化することは興味深いが,これは銀イオンとイオン基の相互作用の強さによると推論した. 2.各種含水ゲル膜をキャスト法により作製し,これに銀イオンを保持してエチレン/エタンの透過実験を行った.ポリビニルアルコール(PVA)ゲル膜では,架橋比の増加とともに透過速度が低下し,ゲル膜の透過性は含水率とほぼ相関された.PAMPSをPVAにブレンドすると,含浸液銀濃度が低くても透過速度が大きいというイオン交換膜特有の挙動が認められ,また含水率も増加するので透過性も向上した. 3.上記の各種膜を用いた銀イオン(キャリヤ-)の透過実験より求めた銀イオンの膜内有効拡散係数は,それぞれの膜によるエチレンの促進輸送速度とある程度の相関があることが判明した.また,低銀イオン濃度域では銀イオンは膜内のイオン基と相互作用しながら束縛移動キャリヤ-として透過するので拡散係数が小さく,高銀イオン濃度域ではイオン基との相互作用が小さい自由移動キャリヤ-として移動するので拡散係数が大きいことが見出された. エチレンの促進輸送速度に対する膜特性の影響は,筆者が提案した促進輸送速度式により定量的に良好に説明できた.
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