研究概要 |
本研究では、新しく開発した界面活性剤ジオレイルリン酸(DOLPA)およびAOTとの混合逆ミセルからなる有機媒体中での分子集合組織の反応場および分離場としての機能化に焦点を絞り研究を展開した.有機媒体中に自発的に形成される分子集合体の一種である逆ミセルは、生体高分子であるタンパク質の抽出操作を可能にした.逆ミセルを形成する代表的な界面活性剤としては,AOT(ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)が挙げられるが、本研究で開発したDOLPAは,従来抽出が困難であった分子量5万以上のタンパク質の有機相中への可溶化を可能にした。また、有機媒体中での分子集合系の反応場としての利用も特殊環境下における生体触媒の活性発現という観点から最近注目されている。本研究では、逆ミセル溶液をナノ構造を有する新たなバイオリアクターと考え、これまでにない新しい"液状固定化酵素"という概念を提案した。すなわち、逆ミセルに固定化した酵素を水相中に投入し、水相中のアミノ酸の選択的加水分解反応に応用した。逆ミセル中に固定化された酵素は、個々融離されて存在するために、耐熱性長期安定性に優れた生体触媒としての特性を示した。さらに、近年の遺伝子工学の発展によって、大量にタンパク質を生産させることができるようになってきた。しかしながら、細胞内に蓄積されたタンパク質は、lnclusion bodyと呼ばれる不活性な凝集体をしばしば形成することが知られている。本研究では、この凝集タンパク質の再生を目的として、逆ミセルを利用した新しいリフォルディング技術を開発した。モデルタンパク質として、RNase Aを取り上げ、尿素で変性させたタンパク質を高効率で再生することに成功した。
|