研究概要 |
本研究では、有機溶媒中で新たな分子集合組織を形成するために,種々の界面活性剤分子を合成し,これらの分子の作り出す集合組織の反応場および分離場としての機能化に焦点を絞り研究を展開した。具体的に得られた研究成果は,以下の通りである. 1.有機媒体中に自発的に形成される分子集合体の一種である逆ミセルは、生体高分子であるタンパク質の抽出操作を可能にした。分子集合組織のタンパク質の抽出の観点から重要なことは,全く同様な逆ミセルの挙動を示した界面活性剤分子が非常に異なるタンパク質の抽出挙動を示す点である.つまりこのことは同一の親水基を有する界面活性剤においても,逆ミセル形成能とタンパク質の抽出能が一義的に相関できないことを示している.また,疎水基の微妙な構造の変化やバランス,界面活性剤の分子の大きさや形がタンパク質の抽出と密接な関係があることが示された. 2.逆ミセル溶液をナノ構造を有する新たなバイオリアクターと考え、これまでにない新しい"液状固定化酵素"という概念を提案した。すなわち、逆ミセルに固定化した酵素を水相中に投入し、水相中のアミノ酸の選択的加水分解反応に応用した。逆ミセル中に固定化された酵素は、個々隔離されて存在するために、耐熱性長期安定性に優れた生体触媒としての特性を示した。 3.凝集タンパク質の再生を目的として、逆ミセルを利用した新しいリフォルディング技術を開発した。モデルタンパク質として、RNase Aを取り上げ、尿素で変性させたタンパク質を高効率で再生することに成功した。
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