研究概要 |
石炭は架橋構造,すなわち高次構造を有していると考えられているが,その詳細は明らかではない。本研究では石炭の架橋構造についての知見を得るため,石炭抽出物-溶媒ゲル膜を作成し,その熱機械分析(TMA)を行い,ゲル膜の粘弾性について検討した。 試料炭としては米国産のUpper Freeport(炭素%86.2wt%)を用いた。石炭をCS_2-NMP(N-メチル-2-ピロリジノン)混合溶媒で抽出し,抽出物をアセトン可溶分(AS),ピリジン可溶分(PS),ピリジン不可溶分(PI)に溶媒分別した。それぞれの抽出成分0.1gにNMPを2ml加え,常温真空下に静置して溶媒を徐々に飛ばし,ゲル膜の作製を試みたところ,PS,PIからはゲル膜が得られたが,ASは溶液と析出試料の二相に分離した。試料の作製過程においてPSでは溶媒の重量分率Wsが0.7程度からゲル化し始め,その後,溶媒の蒸発速度は著しく減少し,長時間放置した後もWs=0.3程度の溶媒が残存した。種々の溶媒含量のPS-NMP,PI-NMPゲル膜のクリープ挙動および応力-歪関係などの熱機械分析により,これらのゲル膜が粘弾性挙動を示す事が分かった。四元素モデルを用いてPS-NMPゲル膜におけるクリープ挙動を弾性,粘弾性,粘性項に分離,解析の結果,溶媒含量の増加に従い粘弾性,弾性は増加したが,弾性は殆ど変化しなかった。 又,残渣の薄膜も別の研究より抽出物と同様の粘弾性挙動を示した。これらの成果は石炭における架橋結合が従来の共有結合ではなく,水素結合などの非共有結合である可能性が大きいことを示した。
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