研究概要 |
石炭を二硫化炭素-N-メチル-2-ピロリジノン(CS2-NMP)混合溶媒を用いて室温で溶媒抽出し、多量の抽出物を得た。その抽出物をアセトンとピリジンを用いてさらに溶媒分別し、アセトン可溶成分(AS)、アセトン不溶-ピリジン可溶成分(PS)、ピリジン不溶成分(PI)に分けた。それら溶媒可溶成分とNMP、あるいはN,N-ジメチルフォルムアミド(DMF)とを混合し、そこから溶媒を徐々に飛ばすことによりゲル膜を作製を試みたところ、PSとPIから均質なゲル膜を作製することができた。さらにゲル膜の性質を示差走査熱量計と赤外分光計を用いて調べたところ、ベル膜形成後の溶媒(NMP)はすべて石炭成分と水素結合しており、フリーの状態のNMPは存在しないことを明らかにした。 そのゲル膜のクリープ挙動および応力-歪み関係などの熱機械分析から、これらのゲル膜が粘弾性挙動を示すことが分かった。原料として用いた溶媒可溶成分は元々共有結合架橋を有していないと考えられるので、このゲル膜は、石炭-石炭間の相互作用および石炭-溶媒間の相互作用から形成された物理架橋ネットワークを構造内に有していることを示唆している。また、このゲル膜内の溶媒の重量割合を変えたところ、その減少とともに粘性歪みと粘弾性歪みが減少し、一方で弾性歪みはほとんど変化しないことが分かった。この結果は、この弾性歪みを与える構造が、石炭自身の架橋構造に由来することを示している。 同じ石炭からの抽出物と残査の粘弾性挙動を比較することを複雑な石炭の高次構造解明への次のステップとして行いたいと考えている。
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