超強酸性を示すH_3PW_<12>O_<40>、強い酸化力を有するH_<3P>Mo_<12>O_<40>等のヘテロポリ酸を素材とする多孔性へテロポリ酸を合成し、それを用いた選択的有機合成反応を実現することを目的とする。さらに、Ptとの複合触媒を用い、新規なアルカン変換反応のための触媒系の構築を図る。具体的に次の成果を得た。 (1)細孔の制御 ヘテトポリ酸のアルカリ酸性塩を調製し、系統的にその細孔構造を解析した。共通に、2.5当量の塩はメソ孔を有し、2.0当量付近では、マイクロ孔のみを有する材料を得た。PtやPdを共存させ同様の合成法で得た複合触媒においても、その細孔構造が保持されたことを確認した。 (2)アルカン変換反応 これらの触媒を用いて、アルカンの異性化を試みた。アルカン変換反応の中でも最も難しいとされるn-ブタンの異性化では、イソブタンへの選択性がPt複合化Cs酸性塩の細孔サイズの変化に伴って大きく異なる現象を見出した。すなわち、細孔サイズが選択性を支配する重要な因子であることを示唆している。このことを明らかにするために、細孔の異なる各種のゼオライトと比較したところ、明らかに、細孔サイズと選択性の間に相関があることがわかった。このことは、マイクロポーラスCs塩が生成物の選択性をその細孔によって制御できる能力をもつ触媒であることを示している。 (3)分子形状選択反応 細孔による分子の識別能を利用して、オレフィンの水素化反応およびアルカンの酸化反応における分子形状選択反応を検討したところ、Pt-Cs_<2.1>H_<0.9>PW_<12>O_<40>はシクロヘキセンの水素化やネオペクタンの酸化を抑制できることがわかった。
|