研究概要 |
プロピレンからプロピレンオキシド合成に代表されるオレフィン類のエポキシ化とベンゼンからフェノール合成に代表される芳香族の水酸化は、多段の反応と特別な酸化剤(過酸化水素、過酸、t-ブチルハイドロパーオキサイド)を必要とする難しい反応である。申請者らは水の電気分解を応用することにより、これらの難しい反応を特別な酸化剤を用いずに、常温常圧下の温和な条件で、それぞれアノード室とカソード室で同時に進行させることを目的とした。まず、二室型電解槽のシリカウ-ル隔膜にリン酸水溶液を含ませ、各種アノード上で水電解を行い、発生期の酸素により1-ヘキセンのエポキシ化を試みた。その結果、白金黒をアノードとして室温で印可電圧約3Vのもとに電気分解すると、アノード室において1-ヘキセンが最大65%の選択率でエポキサイドに転化することを見いだした。この時のエポキシド生成の電流効率は極めて高く、30%を越えた。エポキサイド生成の活性は、白金黒をで焼成すると著しく増大した。以上の結果は他の貴金属黒(パラジウム,ロジウム,ルテニウム,金)では認められず、白金黒で特徴的に見られた。1-ヘキセンの代わりに2-ヘキセンを反応させると、生成した2,3-エポキシヘキサンは、反応物のシス又はトランスコンフォメーションを保持していた。この事実は、エポキシ化反応中の反応中間体が、白金黒表面と強く相互作用して自由回転を妨げられていることを意味し重要である。また、最適反応条件の検討を行った。以上の結果と速度論的結果を基に反応機構を提案した。
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