研究概要 |
プロピレンからプロピレンオキシド合成に代表されるオレフィン類のエポキシ化とペンゼンからフェノール合成に代表される芳香族の水酸化は、多段の反応と高価な酸化剤(過酸化水素、過酸など)を必要とする高難度反応である。申請者らは、水の電気分解を応用し、これらの難しい反応を特別な酸化剤を用いずに常温常圧下で、アノードとカソード室で同時に進行させることが可能な反応系を構築する事を目的とした。まず、[オレフィン,ジクロロメタン溶媒,アノード|リン酸膜|カソード,水蒸気]から成る電解セルを用い、オレフィンのエポキシ化反応に有効な電極触媒の探索を行た。アノード室に1-ヘキセン、プロピレンを溶解させて水の電気分解を実施した結果、Pt黒アノードがエポキシ化反応に最も活性であることが分かった。Pt黒アノードの活性点について検討を行った結果、1)XPS測定にからPt黒中にPtO_2が多く存在していた、2)PtO_2をグラファイトと混合したアノード上でエポキシ化反応が効率よく進行したことから、PtO_2がエポキシ化の活性点であることが分かった。次に、カソードで発生する水素を利用して、前記反応系に、カソードでのベンゼンの水酸化反応を組み込むことを試みた。我々は、以前の研究において、酸素-水素燃料電池反応中に[パラジウム黒、酸化鉄/カーボンウィスカ-]カソード上でベンゼンの水酸化が進行することを見出している。このカソードを前述反応系に用いて水の電気分解を行ったところ、アノード上ではエポキシ化反応が、カソードではベンゼンの水酸化反応が同時に進行することを見出した。また、環境に悪影響をおよぼすジクロロメタン溶媒を用いずに、炭化水素をガスとして供給し、気相電解法でもプロピレンのエポキシ化反応とベンゼン水酸化反応が進行することも見出した。
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