近年、複合糖質に関する研究の急速な進展により、糖鎖が担う生物学的機能の重要性が認識されつつある。しかし、ヒトの血液型をはじめ病気などに関与する糖鎖抗原は、効率的な生産法がまったくなくこのために研究が遅れていると言っても過言ではない。そこで本研究は糖鎖工学にブレークスルーをもたらすべく、重篤な病気の治療に重要なオリゴシアル酸などシアル酸含有糖鎖を微生物により大量生産することを目的とする。 本年度の研究によりシアル酸オリゴマーの生産について、ポリシアル酸を分解するファージを数株発見し、シアル酸オリゴマー(2糖〜6糖)を作る基質特異性の違う酵素数種を同定した。これらの酵素は耐熱性に富み65℃で安定であった。またこれらの酵素のうちポリシアル酸をダイマーまで分解する酵素の部分精製を試みた。この酵素はオクチルグルコースなどの介面活性剤で安定され、その分子量は90kDであった。電子顕微鏡による観察からこのファージは尾部を持ち、さらにファージを部分分解することによりこの尾部にポリシアル酸分解酵素が局在することが明らかとなった。一方、このファージから酵素の遺伝子を分離ずみである。 一方、連鎖球菌の生産するシアリルルイス糖鎖のアナログについては部分精製を行い、複数のガン細胞と血管内皮細胞の接着を阻害することを見出した。
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