小麦胚芽抽出液を翻訳装置として用いて、異種mRNA(レポーター遺伝子として大腸菌ジヒドロ葉酸還元酵素をコードする遺伝子を用いた)を鋳型として無細胞系で蛋白質を合成するシステムの効率化(反応時間の延長と反応速度の向上により蛋白質合成量を飛躍的に高める)及び反応終了後の目的蛋白質の分離・精製について以下のような実績を得た。 1.分子拡散型バイオリアクターの開発 これまでの我々の研究より、小麦胚芽抽出液を用いた無細胞蛋白質合成系では、ATPの枯渇が反応停止の主たる要因であることがわかっている。そこで、反応中、絶えずATPあるいはクレアチン燐酸を外部から反応系に補給できるように、限外濾過膜もしくは透析膜を用いた、分子拡散型バイオリアクターを開発した。膜を介してのATPの移動速度を高めるために、適切なポアサイズの膜の選択、外液のATP濃度を高めること、外液を攪拌すること等により、ATP濃度を最適値に保つことができるようになった。 2.キャップ非依存性mRNA先行配列の必須領域の検討 キャップ非依存性的にリボゾーム複合体への取り組みを促進する配列(IRESと呼ばれている)としてタバコエッチウイルス(TEV)の配列を出発点として、翻訳に必須の領域をtruncation(切詰め法)によって検討した。その結果、TEV配列と同程度の翻訳活性を示す領域があった。 3.翻訳反応終了後の目的蛋白質の分離・精製に関する研究 反応後超遠心分離操作により、3〜5倍程度、また限外濾過膜法により、3〜5倍程度比活性を上げることが出来た。
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