研究概要 |
我々は新しい電池材料になるべき新物質を、イオン導電体の結晶構造を指針に、探索してきた。ここで取り上げた遷移金属とリチウムの複窒化物Li_<3-X>M_XNは、Liの挿入脱離に関して優れた可逆性を示すとともに、Liに対して0.6V程度の電位を示し、陰極として優れた性質を示す事が分かった。この物質群は、Li_3NのLiの一部が他の元素で置換されたもので、このグループに含まれるのはLi_<3-X>Co_XN,Li_<3-X>Ni_XN,Li_<3-X>Cu_XNの3つである.Li_3NはLiとNからなる層とその層間に存在するLiのみの層からなっている.Co,Ni,CuはLi-N層とLi-N層の間のLiのサイトに入る.固溶範囲はCo:0<x<0.5,Ni:0<x<0.6,Cu:0<x<0.4である.この3つの化合物はX線的に見てほとんど違いはない.しかしそのLi脱離-挿入はかなり挙動が異なり非常に興味深い。これらの化合物はどれも金属の置換量が大きいほど大きな充放電容量が得られた。注目されるのはLi_<3-X>Co_XNの充放電容量である。実に900mAh/gという非常に大きな容量が得られた。炭素(C_6Li)の理論容量が375mAh/gであるのでほぼ2.5倍の容量を持つことになる。また電位も前述のLi_3FeN_2やLi_7MnN_4の逆蛍石型構造の化合物に比較しても低いので炭素材料の代わりにLiイオン電池の負極材料として用いられる実力を持つ有望な材料である事が分かった。Li_<1-X>Mn_2O_4やCr_3O_8を正極に電池を組むと、大きな容量の二次電池が実現した。
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