研究概要 |
半導体超微粒子の物性は分子からバルク物質への遷移領域に属するものであり,いずれとも異なった特異な特性を示すことから調製と物性に関する研究が活発に行われてきている。半導体超微粒子の研究は主として溶液中に超微粒子が均一に分散した状態で行われてきたが,この様な系のみでは半導体超微粒子の応用範囲が限定されてしまう。これを解決する方法の1つとして,半導体超微粒子を膜状に固定化することを試み,以下の知見が得られた。 (1)ポリビニルピロリドンで安定化した酸化チタン超微粒子溶液に電場を印加することにより,カソード上に酸化チタン超微粒子ゲルが調製できることを明らかにした。この酸化チタン超微粒子膜は硝酸イオン還元および二酸化炭素の光還元反応に対して顕著な光触媒活性を示し,高い量子効率で各々アンモニア,メタノールが選択的に生成することを初めて見出した。さらにこの超微粒子膜を光触媒に用いて二酸化炭素と硝酸イオンの共存下で光照射することにより,尿素を光合成することに初めて成功した。(2)テトラエトキシシランとチタンテトラエトキシドを同時に加水分解することにより調製した酸化チタン超微粒子ゾル溶液をガラス基板上に塗布・乾燥させることによって,容易にシリカマトリックスで安定化された酸化チタン超微粒子膜を調製でき,得られた酸化チタン超微粒子膜で二酸化炭素の光還元反応を行うと還元生成物として一酸化炭素とギ酸が生成し,その割合は用いた溶媒の誘電率により変化することを見出した。(3)原子レベルで平滑な金単結晶表面に硫化カドミウムをチオール化合物で化学結合させることにより単粒子膜を形成させた。この膜のSTM観察により2〜3nmの大きさの球状の超微粒子が観察され,単粒子膜が形成されていることが確認できた。さらに一つの硫化カドミウムに注目しトンネル分光測定を行うことにより,単一半導体超微粒子のエネルギー構造を決定することができた。
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