研究概要 |
アクセプター型インターカレートである硫酸と塩化鉄とはインターカレーションし得るホスト炭素材のクライテリアに大きな違いがあることが明らかとなった.塩化鉄の場合には有機溶液中でのインターカレーション反応と直接蒸気との反応でも違いがあることが明らかとなった. ドナー型インターカレートであるアルカリ金属-エーテル分子の複合錯体のインターカレーション反応は,硫酸の場合と同様にホスト炭素材の構造が支配因子であるが,さらにその微細組織(コ-クスと熱分解炭素)も影響していることを明らかにした.Na-THFの組み合わせでは,低温処理コ-クスのみでrandom stage構造が生成し,熱分解炭素では他のアルカル金属と同様にstage-1構造を取るという特異なホスト効果を示した.しかし,Na-DMEの組み合わせではそのような特異性は示さず,他のアルカリ金属と同様stage-1構造を生成する.このことは,インターカレーション反応にたいする特異性がNaイオンのみに依るのではなく,錯体分子に依ることを示している.また,有機溶媒としてのエーテル分子をTHFからMeTHFに変えることによって,ホスト炭素材によっては二元系のみでなく三元系層間化合物が生成することが明らかとなり,新しいホストのクライテイアの存在が示唆された. 室温での溶液との反応による層間化合物の生成に限定したとしても,本研究結果はインターカレーション反応が非常に多くの因子によって支配されていることを示している。少なくとも,ホスト炭素材,インターカレート,そして溶液種の3つの因子があり,それらの組み合わせによって,インターカレーション反応が複雑に入り組んでいる.また,本研究で見出したrandom stage構造については,さらにその詳細を検討する必要があるが,ホストのクライテリアとも密接に関連していると予想される.
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