バライト(BaSO_4、重晶石)はバリウム(Ba)の主要原料鉱石であり、現在、その処理法としては1000℃以上で炭素還元する乾式法が用いられている。また、この方法は副生する硫化物の処理が必要なことから、より省エネルギーで環境負荷の小さな新しい処理法の開発が望まれている。本研究はこれらの問題を解決するため、EDTAを用いてバライトからBaを直接浸出し、Ba-EDTA錯体の解離反応を利用して、Baを形態及び粒径を制御した高付加価値の原料粉末として回収することを目的とし、浸出及び回収実験を行った。 〈2段法〉pH12に調製した0.08M EDTA浸出駅に国産バライトを投入して得たBa浸出液に0〜1.2MのNa_2SO_4あるいはNa_2CO_3を加え、封管中90〜200℃で0〜20時間反応させ、生成した沈殿物をSEM観察し、XRDにより同定した。 Na_2SO_4を添加した場合には針状あるいは柱状粒子が生成し、180℃以上では比較的単分散であったが、90℃では多分散となった。180℃以上では反応開始時にすでに粒径の小さな針状粒子が生成し、昇温途中で均一核形成が起こることが分かった。また、Na_2SO_4濃度が低下するとアスペクト比の高い針状のBaSO_4粒子が生成したことから長軸方向の成長速度大きいことが示唆された。[Ba^<2+>]=0.012M、[SO^<2->_4]/[Ba^<2+>]=17.7、180℃、4時間ではほぼ均一な針状BaSO_4粒子が生成し、Ba回収率は95.4%に達した。 Na_2CO_3の場合は多分散のBaCO_3柱状粒子が生成し、[Ba^<2+>]=0.012M、[SO^<2->_4]/[Ba^<2+>]=17.7、180℃、4時間でBa回収率は77.5%に達した。 〈1段法〉中国産バライト、0〜0.02M EDTA及び0.4〜1.2M Na_2CO_3を封管中で混合し、2段法と同様に実験を行った。生成粒子はEDTA共存下では柱状であり、Na_2CO_3濃度が増加すると六角柱状粒子が生成した。また、かき混ぜにより粒径のそろった六角柱状粒子が得られた。しかし、EDTA非共存下では不定形あるいは斜方晶形状粒子が生成した。残さはBaCO_3と未反応バライトとの混合相であった。
|