本年度は前年度の研究(1、2)を継続すると共に、六方晶フォージャサイトの格子空間内で液相法によりポリチオフェンクラスターを合成し、評価した(3)。 1.立法晶フォージャサイトの格子空間内で生成したポリピロールクラスターが有するラジカルについてESR法により詳細に検討した。その結果、重合開始剤として担持したCu(II)の約20〜50%が重合反応に関与し、単位格子あたりに生成したスピンの数は約0.03〜0.11となり、クラスターの平均鎖長は6〜45モノマー単位であることを見いだした。またクラスターを包蔵することにより高周波数領域で電気伝導性が向上することも見いだした。 2.リン酸アルミニウムモレキュラーシ-ブの格子空間内へのp-ニトロフェノールクラスターの包蔵量と非線形光学特性(第二高調波発生)との関係を検討した。その結果、第二高調波の強度は包蔵量と共に増加し、包蔵量が約8mass%以上でほぼ一定になることを見いだした。またo-およびm-ニトロフェノールクラスターを包蔵した場合も第二高調波が発生し、その強度はm-<p-<o-となり、興味深い挙動を見いだした。この点については現在検討中である。 3.六方晶フォージャサイトの格子空間内への包蔵において、出発物にチオフェンを用いた場合はバイポーラロンの電子構造を持つポリチオフェンクラスターが得られ、出発物にビチオフェンを用いた場合はNa型ではバイポーラロン、一部のH型ではポーラロンの電子構造を持つポリチオフェンクラスターが得られた。
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