有機-無機複合機能薄膜の作製を目的として、はじめに、ゾル-ゲル法で作製される着色ゲル薄膜を得るための有機色素のこれまでの研究の総括を行った。次に、機能性色素として、スピロベンゾピランおよびマラカイトグリーンロイコシアニド系フォトクロミック色素を合成し、ゾル-ゲル法で作製されるゲル薄膜にドープした。このようにして得られたゲル薄膜の基本特性、ゲル組成による種々の機能特性への影響について検討し、以下の結果が得られた。 1.ゾル-ゲル法で作製されるシリケート系ゲル薄膜の着色薄膜を得るためには、有機染料として、基本構造がカチオン性であり、しかも大きなモル吸光係数と水-アルコールに対する高い溶解度を有することが必要であることが判った。 2.スピロベンゾピランの超微粒子分散液を用いて、初めて、フォトクロミックゲル薄膜がゾル-ゲル法で作製できることを見い出した。また、このフォトクロミックゲル薄膜中で生成する発色体は、一般のアルコキシシランから作製した場合、ゾルの反応時間が長くなるにつれて、2種類以上になることが判った。 3.マラカイトグリーンロイコシアニドは直接ゾル液に溶解させることで、感光性ゲル薄膜が得られることを見い出した。また、このゲル薄膜は、紫外光照射で緑色に発色するが、その消色反応は、初期濃度の20-30%で停止することが明らかとなった。 4.機能性ゲル薄膜として、メチルアルコキシシランからのゲル薄膜を水晶振動子に塗布することで、アルコールを吸着し、その結果、共振周波数が変化し、アルコールセンサーになることを見い出した。 以上の結果は、すでに論文2報と口頭発表5件で公表した。
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