当初計画した研究のうち、金属の活性化とその利用においては、三つの研究成果が得られた。(1)亜鉛金属表面の活性化と電子移動のメカニズムの解明を有機反応を通して行った。種々の添加物、とくに微量の鉛やMe_3SiCl、HMPAなどの添加によって、反応経路が大きく変わることを見いだした。電気化学からのアプローチとして、サイクリックボルタンメトリーなどの装置を用いて、亜鉛などの金属の酸化還元電位に与える、微量の鉛の添加や種々の活性化の影響なども調べた。(2)マンガン金属の微量の鉛の添加による活性化とそれを用いた高選択的な炭素-炭素結合生成反応を見いだし、本年秋に広島で行なわれた有機金属化学討論会で口頭発表を行なった(第42回有機金属化学討論会B203)。(3)金属クロムを活性化することにより、低原子価のクロムとして反応に用いることができることを見いだした(平成8年3月末の第70回日本化学会春季年会で発表の予定)。現在、これら二つの反応については、さらに研究を続けているが、マンガンの活性化になぜ亜鉛では阻害効果のある鉛が有効なのかという新たな問題点が出てきており、この点について、電気化学および金属学によるアプローチで次年度に検討する予定である。
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