平成7年度の研究実施計画に基づき、中心金属付近の静電的および立体的環境を制御した金属ポルフィリン錯体を合成し、それらをモンモリロナイト層間に固定化した複合体について、その物理的性状を検討し、オレフィンの酸素酸化反応に対する触媒としての機能を評価した。得られた成果は以下に示す通りである。 1.芳香族アミンあるいは複素環アミンの第四級アンモニウム塩を置換基にもつカチオン性のコバルトポルフィリン錯体をモンモリロナイト層間に固定化した複合体を合成した。得られた複合体の層間隙はポルフィリン環に導入した置換基の分子サイズに応じて0.4〜0.7mm拡大した。比表面積は固定化したポルフィリン濃度に比例して増大した。また層間化合物の平均細孔径および細孔容積はポルフィリン環に導入した置換基の構造に依存した。 2.粘土層間固定化コバルトポルフィリンは脂肪族アルデヒド共存下で1-ヘキセン、シクロヘキセンなどのオレフィンの酸素酸化を触媒し、選択的にエポキシドを生成することを見いだした。このとき脂肪族アルデヒドは還元剤として作用し、アルデヒドの構造と基質に対する濃度比がエポキシドの収率と選択性に重要な影響を及ぼす。反応条件を精査したところ、還元剤としてイソブチルアルデヒドを用い、還元剤対基質濃度比が1.5mol/molの反応の場合に最も高いエポキシド収率を与えた。反応のターンオバ-数は1.4x10^4h^<-1>と著しく高い値を示した。 3.上述の反応に対する層間固定化触媒の活性は錯体単独のものに比較して著しく高い。後者の反応の場合には、触媒の失活する現象が観測された。モンモリロナイトはコバルトポルフィリン錯体の安定化に寄与するとともに、ゲスト分子との空間的な相互作用によって立体規制された反応場を構築して、酸素分子を活性化し、有機酸化反応を促進する役割を担っているものと考えられる。
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