研究概要 |
平成8年度の研究実施計画に基づき、中心金属付近の静電的および立体的環境を精密に制御したコバルトポルフィリン錯体を合成し,それらの分子構造とモンモリロナイトの層間に固定化することによって発現する触媒機能との関連性を調べた。得られた成果は以下に示す通りである。 1.モンモリロナイト層間固定化コバルトポルフィリン錯体は、イソブチルアルデヒド共存下、シクロヘキセンの酸素酸化によるエポキシ化反応を著しく促進する。エポキシドの収率はゲスト分子の構造、特に、立体的規制に影響を及ぼす置換基の分子サイズに著しく依存し、0.68nmの層間隙をもつコバルトテトラキス(N-エチル-3-ピリジル)ポルフィリン固体化触媒が最も高い。 2.各種オレフィンのエポキシ化反応を試みたところ、エポキシドの収率は基質の分子サイズに著しく依存した。基質の分子サイズに応じたポルフィリン中心金属の軸上の空間の制御による反応場の形成が触媒設計上とくに重要であることを明らかにした。 3.シクロヘキセンのエポキシ化反応に対するポルフィリン中心金属付近の静電的な影響を見るため、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタブロモ-5,10,15,20-テトラキス(N-エチル-3ピリジル)ポルフィリンおよび2,3,7,8,12,13,17,18-オクタブロモ-5,10,15,20-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンのコバルト錯体をそれぞれ合成し、反応を試みたところ、ハロゲン化錯体の触媒活性はあまり高いとはいえず、静電的な効果は比較的小さいことがわかった。ポルフィリン骨格に電子吸引性の置換基を導入することによって期待される効果についてはさらに検討が必要である。
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