これまで我々は、Rh錯体触媒、例えば、[Rh(norbornadienn)C1]2が脂肪族や芳香族アセチレンの立体規則性重合の重合触媒になり、高選択的にシス体のポリアセチレンを与えることを明らかにしてきた。脂肪族アセチレン、例えばプロピオレート、HC≡CCOORの場合、アルコールが重合溶媒となり、また助触媒として働くことを明らかにした。本研究ではエステルの側鎖として直鎖の脂肪族アルキルを有するプロピオレートをRh錯体触媒を用いて立体規則的に重合し、生成したシス体のポリアセチレンのエステルが酸素冨化膜として機能するかどうかを調べたものである。その結果、側鎖がプロピル基の時は大変有効な新規の酸素冨化膜となることがわかった。酸素と窒素の透過係数はそれぞれ5.5x10^<-9>、1.6x10^<-9>であり、その透過係数の比、即ち分離係数α=3.5であった。これは従来の酸素冨化膜の置換基の構成基、たとえばSi(Me)基やシロキサン基がなくても良いことを示している。この理由として、Rh錯体で重合すると生成した固相のポリアセチレンが擬ヘキサゴナルのカラムナ-構造、即ち自己組織を作り、これが分子の中空糸として働き、酸素の選択的透過を促しているものと考えられる。
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