本研究者らは以前にRh錯体触媒がシス体のモノ置換ポリアセチレンを与える新規立体特異的合成触媒であることを明かにして来た。置換ポリアセチレンは新素材として、多方面から期待されているが、本研究で生成した置換ポリアセチレンは分子量が大きく、空気中で安定であり、また溶媒に多くは可溶である。しかし、このような共役系ポリマーの幾何構造と上記の関連を明かにした研究は殆どなされていない。したがって本研究では、その機能の一つである酸素冨化機能の研究のために必要な基礎的な知見を得るため、以下の研究を行った。モノ置換アセチレンがRh錯体触媒で立体規則的に重合しているかどうかをレーザーラマン、拡散反射のUV法、NMR及び電子スピン共鳴法で調べ、詳細な重合条件と生成ポリマーの幾何構造の知見を得た。 目的のアセチレンエステルがRh錯体触媒で重合でき、またそのポリマーが製膜性を示した。このポリマーは自己集合組織として、擬ヘキサゴナル、即ちカラムナ-構造を取り、その直径は10〜60∃の範囲で精密に制御できること、しかも、この孔が酸素等の分子の選択透過をさせていることを見出した。したがって、本科研費で設置したガスパームを使用し、酸素と窒素の透過係数を求めたところ、その透過係数の比:α=3.4を示した。これは従来の材料と大きく構造が異なっていても、酸素冨化膜として高性能であることを示しており、今後の発展が期待できる。
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